狩猟装備 服装編
− 山に入る際に身につける道具達 -



服装 巻き狩り
誤射を避けるために、視認性の高い猟友会支給のベスト&帽子は絶対に着用する。イノシシ・シカは青色以外は識別できない色盲であるので捕獲に影響はない。

無線・引き綱数本・地図・救急用品・弁当・非常食・水・ビニール袋数枚・タオル・ライター・コンパス付き笛など多くの物品は、ほとんどベストに収納する。山に一日中入りっぱなし&補給が望めないからである。弾帯には装弾12発・剣鉈・ナイフ(小)・マルチツール・GPSを装備。鉄砲も含めるとかなりの重量になる。シカの群が多く出る所では装弾も倍量持って行くこともある。足元はスパイク地下足袋ネオプレンスパッツ

服装 シカの忍び・流し猟
シカの忍び猟及び流し猟の服装である。シカは色盲なので、赤や黄色など目立つ色を着用する方が望ましい。むしろゴソゴソ動き回るので、シカと間違われ他の狩猟者に誤射される危険性が高まるので迷彩服の着用は慎んだ方がよい。動くのでできるだけ軽装を心がけている。

弾帯、剣鉈、GPS、地図、鹿笛(3種類)、レンジファインダー、引き綱を装備している。足元はスパイク地下足袋or登山靴、流しの時は白長靴の時もある。

服装 カモ猟
鳥類であるカモは色が識別できるので、できるだけ目立たないよう、3D偽装服・マスクを着用している。これにより、水面にいるカモも飛ばれる確率がグンと減った。偽装服の下は猟友会支給のベストを着ている。他の狩猟者を発見したときは、偽装服を脱ぎこちらの存在をアピールし、危険回避するためである。

弾を多く消費するので25発の弾帯+10発の予備ポーチを付け、双眼鏡、レンジファインダーも装備している。

服装 有害鳥獣捕獲
捕獲員章を着用する以外は猟期と同じ。季節に応じて薄着になるくらいだ。最近気に入っているのが、消防のレスキュー隊が着用する救助服である。重いが丈夫で視認性が高く、本猟で勢子さん達が愛用しているのも納得だ。

カラス駆除の際は服装を覚えられるので、迷彩服や作業服を着たり麦わら帽を被ったり変相しないと、飛んでるカラスは射程に近づかない。イノシシ駆除の際は、目立つ服装をする。

夏場で暑くても、必ず長袖・長ズボンを着用する。素肌を晒すのは棘や毒虫・ダニなどにやられるので大変危険である。所持品は無線・引き綱・弾帯・剣鉈・水・GPS位で、かなり軽装である。



ベストの中身
猟友会支給の新型ベスト。

広く意見を募集し考えられたデザインで、視認性が良くて収納が多い。弾差しや、無線機用ポケット、取り外せる大型の背面ポケットなど、今までの物とは違い大変使いやすい。

この中には予備の装弾、無線機、犬の引き綱、獲物の引き綱、地図、ニトリル手袋、ガットフック、ポリ袋数枚、タオル、水筒代わりの500mlペットボトル、圧縮包帯セット、非常食が詰まっている。

ハンディー無線機


       
左から順に・・・

現在メインで使用しているケンウッド製のTH-79。古い機種であるが、UU/VVの二波同時受信もできるし独立音量調整ができる。出力も通常2.7W、大型バッテリーで4.5Wと十分で感度も良い。液晶回りに不具合が出やすい機種らしいが、現在の所まだ大丈夫。長く使っていきたい無線機だ。

防水でバッテリーで5W送信可能なスタンダードのスタンダードVX-7。出力5Wは相手には届くが、向こうからの声が聞こえない。と言うことが多発し、バッテリーを持たすためにも2Wに押さえて交信している。麓のモービル機と通話するときなどは5Wハイパワーで送信する。同時受信ができるが、独立した音量調整ができないので、犬のマーカーを取りながら通話すると、とてもうるさくて会話が困難になる。40cmのアンテナを付けても受信性能もあまりよろしくないので、現在はバックアップに回っている。

予備機1はケンウッドのTH-78。オークションで衝動買いしたが、キーの蓋がスライド式で気に入らない。単三が6本と重いのも使わない理由だ。

予備機2は144MHz専用のスタンダード製FT-203。かなり古い機種で、筐体はデカく重い。電池も6本必要でさらに重くなる。骨董品であるが、送受信は問題ないので、車に積みっぱなしで万一の時に備え待機中。

マーカー取り以外の通話する無線は、音を漏らさないために耳掛け式イヤホンとピンマイク・ハンドマイクを使用する。耳の穴に入れるタイプは、一日使っていると痛くなるが、耳掛け式は何ともない。外の音も聞こえる(かなり重要!)ので、音源方向が分かり手放せないアイテムだ。


引き綱各種
右側:2mほどのロープにカン付スプリングフックを付けた犬の引き綱(リード)である。犬を回収するときに必要となるので2セットはポケットに忍ばせておく。

左側:ワイヤーとロープを組み合わせたのが、獲物を回収するときに使う引き綱だ。ワイヤー部の輪は可動式で、獲物の首や上顎を締め上げるのでしっかりと固定できる。獲物を釣り上げて解体する際にも活躍する。これは一本あればOKだ。

地図
国土地理院のオンライン地図をカシミールでA4に印刷した物である。

1/25,000もしくは1/12,500の縮尺で濡れても滲まない顔料インクで印刷している。等高線や林道はもちろん、家や川など参考になる情報満載だ。

本猟の時は範囲がとても広いので、8枚ほど携帯する。ジップロックに入れてあるので、邪魔にならず防水は完璧である。半分に折ってベストの内ポケットに忍ばせている。

使用する際はGPSとセットで使うことが多い。

解体セット
ニトリルゴムの手袋3セットとガットフックの組み合わせだ。谷底など獲物の搬送が難しい場合、現場で解体するために使用する。

手袋は薄くて丈夫な使い捨ての手袋だ。ラテックス製は破れやすいので、少々値が張るがニトリルゴムを愛用している。

ガーバー製のガットフックは、皮に穴を開けたらフックの先端を引っかけて一気に下に下ろす。肉は無傷で毛皮のみジッパーを下ろすように切れることから大変重宝している。処理速度が上がるのでオススメアイテムだ。


ガムテープ巻きライター
ターボライターにガムテープを巻いた物。

風のある中や、かじかんだ手で確実に着火できる着火器はこれだ。普通のライターでは風を避けないとすぐ消えるから使えない。

本体に巻いてあるガムテープは、火起こしの際の着火剤として大変優秀である。濡れても火が付くし、火力があるので薪が湿っていても火を付けることができる。
また、服が破れた際の補修や、絆創膏代わり、骨折した際の副木の固定など使用用途は幅広い。


目印テープ
待ちの場所やルートを後に伝えたり、するのに使う。

登山者が来ない所で使わないと、迷わせることになるので使用の際は注意が必要。

ポリ袋・タオル・ペットボトル

何の変哲もない買い物時に貰える袋だ。
折りたたんでおけばコンパクトになり、重量もないので数枚持つ。現場で解体した肉を入れたり、キノコや山菜など持って帰るときにも重宝する。他にも水を運んだり、防寒に使ったりなど汎用性のある物なので、車のサイドポケットにも幾つか忍ばせている。


タオルは汗を拭いたり、首に巻いて防寒にしたりと通常使用の他に、犬が切られた際の大型包帯にしたりする。白色はシカの尻毛と間違われ、誤射の可能性があるので絶対に使わない。黄色や緑色などが良い。私はPXで購入したOD色のを使っている。

以前は水筒を腰に付けていたが、軽くて手軽なペットボトルに移行した。お茶の容器をそのまま使っていたが、すぐにベコベコになるので炭酸飲料の丸形が丈夫でオススメ。水場のない深い山に一日はいるときは2本背中のポケットに入れている。外傷や犬の手当などに使うので、一本は真水が望ましい。

大量に汗をかくときは塩類補給のため、訓練時に支給される凍結乾燥梅肉粒の民間品梅ぼし純を摂取する。

非常食
フェリーなどの救命ボートに乗っている救難食料をバラして1パックだけポケットに入れている。車に弁当を置いたまま山から下りれないなどに摂取する。

写真の協和化工製のブロックは、蝋を食べているようで激マズ!萬有食品のビスケットバーが香ばしくて落雁のようで実に美味い!(リンクは同じ品の民間向け)

主に脂肪・炭水化物・砂糖で構成されているのでカロリーが高い。水無しで食べれるよう考えられているので、山の行動食には最適だ。

圧縮包帯
正確には米軍のフィールド・ドレッシングキット。包帯と吸収体であるコットンガーゼが圧縮されており、出血を吸収し圧迫止血するのに使う。

人間が大ケガした際に用いるほか、犬がシシに切られた際の患部保護にも使う。実際に山中でイノシシに切られ腸管が脱出している犬に対して使用したことがある。なお、車にはこれらが10セットほど救急袋に入っている。



弾帯
米軍のアリス装備のピストルベルト。ワンタッチで取り外しができ幅が広く丈夫。重い装備品を取り付けてもヘタることなく、安定して携帯することができる。狩猟の際は必ず必要とする装備を運搬するのに必要。


弾刺し、剣鉈、ナイフ、マルチツール、GPSポーチ、ファーストエイドポーチで構成されている。

弾刺し
25発携帯できる革製弾帯を切ってベルト通しを付けた物である。

25連発のままだと、ナイフなどが携帯できず不便だったので改造。6発ずつ刺せる物をベルト左右に2つ付け、計12発携帯できる。

通常の猪撃ちは9発(3回分)サボットスラグ弾、残り3発は鳥弾(5号弾)を刺している。

剣鉈
止め刺しや放血、焚き火や搬出に使う太い木を切ったり、射界を確保するのに枝を払ったりと色々と必要になる剣鉈。和式刃物専門店 トヨクニが打った剣鉈でダマスカス模様が美しい。刃渡りも7寸(210mm)と充分な長さがあり、100kg級イノシシでも心臓を一刺しでOK 血溝があるので、刺した後抜けなくなることがない。

狩猟を始めてしばらくして、木を切っても傷まず丈夫で、先端が鋭利で刺すことができる物をさがしていたら、正にピッタリな物があった。現在のラインナップには無いようだが、ダマスカス31層・黒槌仕上げ・鋼は白鋼で切れ味と研ぎやすさを両立している。

最初は木鞘だったが、歩く度にカタカタ音がするのでシースを自作。音がせずスマートに携帯できるので大変気に入っている。

ナイフ
現在主に使っているのは3種類。主に獲物の解体に使用するので、刃は仕上げに革砥を使いとても鋭利にしている。連続して出猟するときなど、研ぎが間に合わないときは弾帯から付け替えて出撃する。使いやすいのは刃渡り9cmのドロップポイントのナイフだ。

ガーバーA425:ハイス鋼使用の20年以上前に作られたモデル。とても古い品だが、切れ味が良く刃厚が薄い。
少し重く、手袋をしていると、グリップがシシの脂で滑りやすい。だが6年間探してやっと手に入れた品なので、とても気に入っている。

ファルクニーベン F1:日本刀のようにサンドイッチ構造で、鋼材はV金10号を使っている。スウェーデン空軍採用のサバイバルナイフだが、大きさ・形状が骨抜きにちょうど良い。若干刃厚があるが、切れ味が鋭く長持ちし、シースもシンプルでとても使いやすい。開発コンセプトは「すぐにヘリコプターで迎えに行くから、パラシュートで脱出したら焚き火をして待っててね」だそうだw 太い木を切れるようにフルタングで大変丈夫に作られている。

自作ナイフ:自分で作った物だが、切れ味は良く使える。鋼材がクロモ7なので錆に強い。出番が一番多いナイフだ。

ナイフ バックアップ

BUCKM9バヨネット:米軍採用の銃剣の民間品。民間向けなので着剣装置が省略されている。銃剣は武器なので所持は違反であるが、この品は問題ない。切れ味は鈍く、めちゃ重いので使用頻度はほとんどゼロ。パイプの先に縛り付け罠の止め刺し用に使用予定。

KA-BAR USMCナイフ:米海兵隊伝統のナイフ。鋭い切れ味は無いが、比較的軽くて丈夫。15年ほど前から渓流釣りのお供であったが、剣鉈を装備しているので完全に出番が無くなった。

トヨクニ製の土佐四万十渓流ナイフ105DM青黒槌:刃厚があり細身で使いにくい。現在は使うことはない。

GERBERゲイター :製造中止になっている折りたたみ式のナイフ。鋼材は154CMなので切れ味は大変よい。形状もドロップハンタータイプで、グリップも滑りにくく、使いやすくて気に入っている。これ一本でシカの解体も余裕でできる。バックアップとしてザックの中に入っている。安いので初心者にもお勧めできるナイフだ。折りたたみタイプなので血や肉がグリップの隙間に入るのが気になる。

COLD STEELマスターハンター :世界中で実際にハンティングに使用し、ハンターが絶賛しているとのふれこみであったが・・・ 刃の形状が若干尖っているので微妙。鋼材はカーボンV(現在はVG1)であるので錆にめちゃ弱く、ガンブルーで染めて対策した。最終的には新人ハンターにプレゼントとなった。

マルチツール
SOGのパワー プライヤーである。

精度の高いペンチと各種ツールが一体になった物。銃の修理やマーカーのON/OFFや電池交換など色々と使える。

15年以上使っている古参兵だが、意外と使用頻度が高く手放せない。


GPS
ガーミン製GpsMap60CSxである。恐ろしく高性能なハンディーGPSで10年前に買ったガーミンCS12とは比較にならない。一度衛星を捕捉すれば、深い谷や室内でもロストせず、大変粘り強く捕捉し続ける。精度も抜群でピンポイントに現在地点を表示する。

UUDの地図を入れてあるので、地名や道路、等高線などが表示され、通った軌跡や現在地の地形などが手に取るように分かる。知らない山でも地形が読めるので、とても動きやすい。広範囲を見るためにベストに収めている印刷した地図も併用する。

また、PCと接続してカシミールにトラックログを送ることで、一日の猟がどのように行われたか振り返るのに大変役に立つ。いまや絶対に手放せない大切な道具である。

携帯の際は、弾帯に付けた米軍のMOLLEマガジンポーチに入れている。

救急用品
ジプロックで防水してMOLLEマガジンポーチに詰め込んでいる。

絆創膏、滅菌ガーゼ、圧縮包帯、抗ヒスタミン軟膏、ポイズンリムーバー、安全ピン、針と糸で構成されている。外傷と毒虫、毒ヘビの対処を想定している。

現場での処置用なので最低限だけ携帯し、その他の物品は車載の救急袋に収めている。


- 以下狙い物や季節などに応じて持ち歩く物 -

レンジファインダー
ニコンのレーザーファインダー(写真は440)レーザーで距離を測定する現代版の測距儀である。

本来はゴルフ場でピンまでの距離を測るのに使うようだが、狩猟ではサボットでの遠射やエアライフル狙撃など正確な距離を知る必要がある時に使う。共に弾頭のドロップ量を計算しなければ、遠距離での一撃必殺は難しいのだ。

8倍のスコープになっており、電源を入れるとレティクルが表示される。測定ボタンを押せば一瞬でレティクル中央の距離が表示されるのである。

これを使うと目測が如何にいいかげんか思い知ることになる。遠射では絶対手放せない道具である。

鹿笛各種
猟期初めの繁殖期に威力を発揮するコール類。オス、メスの声、威嚇鳴き、警戒鳴きを出すことができる。

よく使うのは真ん中2つ。
これらでシカを寄せて撃つコール猟は、シカが目の前までやってくるのでとても面白い猟法である。

ただし、興奮したシカの角で刺し殺される事故も起こっていることから、銃器を手にしてない時は山中で安易に吹かない方がよい。



バードナイフ
T氏より頂いた鳥用のナイフで、鴨撃ちの時に携帯する。

右側は、細身で腹を割きやすいブレードと、腸抜きフックである。
フックは、総排出腔(肛門)に差し込み、くるりと回して腸を引きずり出すのに使う。

左側はレミントン製散弾銃用の12番と20番のチョークレンチとなっている。

虫除け
真冬は蚊に悩ませられる事はないが、駆除期間中は耳元を飛ぶ蚊や素早く食い付いてくるダニに悩ませられる。そこで必要になるのがこれらのアイテム。

チグアウェイ :米軍が採用しているバグジュース。硫黄が主成分なので、わずかに別府にいるような匂いがする。洗濯しても服が何となく硫黄臭いのが辛い。だが、虫除け効果はバッチリなので悩む所。

虫除けスプレー:その辺で売ってる普通の品。化粧品臭さがイノシシにどう影響するかは不明だが、あまり良いとは思えない。

私の猟場では山ヒルが出ないのでまだ良いが、前に県南の鹿が多い場所に行ったら2カ所やられてしまった。あの辺行くときはヤマビル忌避剤 ヒルノックみたいな忌避剤も手に入れなければなぁ・・・